地ビール探訪: 辺久のクラフトビール醸造所レポート

辺久町の中心部から車で約15分、山あいに佇む小さなクラフトビール醸造所を訪れました。木目を生かしたログハウス風の建物に足を踏み入れると、ホップの爽やかな香りが鼻をくすぐります。まず出迎えてくれたのは、オーナー兼ブルワーの佐々木さん。地元産の麦芽とホップを使い、季節ごとに異なるレシピで仕込むこだわりを聞きながら、工場見学がスタートしました。

醸造タンクの並ぶ清潔なスペースでは、発酵中のビールがシュワシュワとガスをはじく音が心地よく響きます。佐々木さんは「辺久の冷涼な気候が発酵に適していて、香り高いビールができるんです」と説明してくれました。蒸留前の麦汁を一口味見すると、ほのかなモルトの甘みとホップの爽快な苦みが同時に感じられ、仕込み工程の奥深さを実感します。

工場見学の後は、併設のテイスティングルームへ。木製カウンター越しに、一度に最大4種類のビールが楽しめる「テイスティングセット」(各50ml×4)が用意されていました。まずは定番の「辺久ゴールデンエール」を。淡い黄金色の液体は、柑橘系ホップの豊かな香りと、すっきりとした後味が特徴です。続いて「森のIPA」は、強めのホップが炸裂し、苦みとフルーティさが麒麟の舞を思わせるような華やかさがあります。

さらに季節限定ビール「桜香るウィートエール」は、淡いピンク色とともに桜花エキスが香り、口に含むとほんのりと甘く、春の訪れを感じさせます。そして最後は一番どっしりした「辺久の黒ビール」。ローストされた麦芽のコク深い香りが鼻腔をくすぐり、焦がしキャラメルのようなほろ苦さが心地よく後を引きます。どれも「地元の自然を表現したい」という佐々木さんの熱い思いが詰まっていて、一口ごとに辺久町の風土を味わう感覚でした。

テイスティングの合間に、地元のパン屋が焼くハード系パンや、近隣農家のチーズを合わせるとビールの味わいがさらに引き立ちます。店内のボードには、これまでの醸造記録や地元イベント参加情報が掲示されており、「地域とともに歩む醸造所」の姿勢が伝わってきました。帰り際、佐々木さんは「自分たちのビールで、少しでも地元を盛り上げたい」と語ってくれました。

帰路、辺久の里道を走りながら思ったのは、クラフトビールがただの飲み物ではなく、地域の歴史と人々の情熱をつなぐ架け橋になっているということです。次回は、春の花見シーズンに合わせて「桜香るウィートエール」を味わいに再訪したいと思います。あなたも辺久の自然とクラフトビールの豊かな味わいを、ぜひ体験してみてください。

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